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日本服飾美術史〈下〉 (1973年)

10/07/2020 09:54:48, , 渡辺 素舟

によって 渡辺 素舟
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日本服飾美術史〈下〉 (1973年)を読んだ後、読者のコメントの下に見つけるでしょう。 参考までにご検討ください。
この本は、1973年に雄山閣から上下2分冊で刊行されました。私が持っているもの(アップしている画像の本)は1973年の初版で、発行当時の値段は2000円でした。本の造りはA5版の布張りハードカバー・ホローバックで、厚紙のケース入りです。総ページ数は186頁ほど、遊び紙が入った洒落た造本ですが、全項モノクロでカラーページはありません。写真や図版は、この当時の本としては標準的だと思える程度には入っているものの、視覚的に把握することが大切な服飾関連の本としては、十分な量とは言えません。また、恐らく著者自筆と思われる挿絵は、お世辞にも上手いとは言えない出来です(著者は元々漢文科出身で、絵描きではありませんから無理もないのですが)。著者の渡辺素舟氏は明治23年生まれで、東洋大学漢文学科を卒業した後、中国の古代文様や陶芸の研究に進み、昭和23年に多摩造形芸術専門学校(現多摩美大)の教授となり、長く同職を勤められた方です。専門は工芸史や文様史で、その方面で有名な著作が幾点もあります。本書の内容については、目次の大見出しを書き出せば以下の通りです。和風時代後期の服飾第14章鎌倉・室町の服飾1時代服飾の大勢と織物2鎌倉・室町時代の女装3僧侶によってもたらされた服飾技術4南北朝・室町時代の服飾伏勢5当時の輸入織物6小袖小袖・きもの時代の服飾第15章織豊時代の服飾1男子の服装2女子の服装3当代の情勢と輸入織物並び名物裂第16章江戸時代の服飾(一)1江戸時代の服装2当代の服装3西陣の織物4紅毛人(オランダ)を通して南方から輸入した織物5島(縞)物6莫臥児の金糸織と縞と更紗7黄八丈第17章江戸時代の服飾(二)1江戸文化としての衣裳2染色の情勢3色と染模様4きものと帯と結び方5化政時代の情勢附黒と庶民的な意気6絣7当代の服装8髪・油・櫛・簪・こうがい(←JIS水準外漢字)一見して判る通り、明治維新以降はバッサリと切り捨てています。そこまで思い切りよく範囲を絞っても、平安まででほぼ同じページ数を使っていた上巻に比べると、各時代の衣裳については若干密度が薄くなっている印象があります。中世(鎌倉・室町)の風俗や服飾に強い関心を持つ方は、この程度の内容では不十分だと感じるかも知れません。特に庶民の服飾に関して、江戸期にはそれなりの記述があるのに、中世の部分ではほとんど言及がないのは物足りなさを感じる人が多いのではないかと思います。とはいえ著者は元々が文様史や工芸史が専門の方ですから、縞や絣や友禅や小紋など、時代時代に登場した新技術については、一通り触れられています。文章については、多分ご本人は普段は比較的堅い文語調の文章を書く方だと思われ、それが易しい文章を書こうと殊更に努めている雰囲気です。しかし板に付いていないというか無理をしているというか、却ってテンポの悪い取って付けたような文体になってしまっていて、気持ちよく読み進められる文章にはなっていません。それでも、出版当時は日本の服飾史を通史として扱った本はまだ少なかったこともあり(有職故実の本なら結構ありましたが)、かなり重宝させてもらいました。個人的な感謝も含めて星は5つです。古書の値段はあまり高くないようですし、服飾史に興味のある人や服飾史を学んでいる人なら、買っても無駄にはなりません。ただし、上記の通り文章には癖があるので、読み通すには少しばかり根気が要ります。

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